第1回 風邪のひき始めには「葛根湯」

「症状で選ぶ漢方薬ナビ」シリーズの第1回は、寒い季節になると気になる「風邪のひき始め」に昔から親しまれてきた漢方薬、**葛根湯(かっこんとう)**をご紹介します。

「ちょっと寒気がする」「肩がこわばってきた」――そんな“風邪の入り口”でよく名前が挙がるのが葛根湯です。テレビCMやドラッグストアの棚でもおなじみで、漢方薬の中でも特に知名度の高い処方のひとつといえるでしょう。今回は、葛根湯がどのような漢方薬なのか、どのような状態の方に用いられるのか、そして使用にあたって気をつけたい点などを、わかりやすく整理してご紹介します。

🤧 こんなサイン、感じていませんか?

  • 朝起きたときに「ゾクッ」とした寒気を感じる
  • 首や肩がこわばり、重く感じる
  • なんとなく熱っぽい気がする
  • 鼻の奥に違和感がある
  • 「風邪のひき始めかもしれない」という独特の感覚がある

こうした“なんとなく不調”のサインは、本格的な体調不良の前兆として誰もが経験するものです。このタイミングで体をいたわりたいと考えたときに、日本で長く親しまれてきた漢方薬のひとつが葛根湯です。

🌿 葛根湯ってどのような漢方薬?

葛根湯は、約1800年前の中国の古典医学書『傷寒論(しょうかんろん)』に収載されている、非常に歴史の長い処方です。日本でも江戸時代から広く用いられてきた、いわば「漢方の定番」ともいえる存在で、現代でも医療用・一般用ともに多くの方に利用されています。

効能効果としては、感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛みなどに用いられる漢方薬として知られています(※効能効果は製品の添付文書をご確認ください)。

配合されている生薬は、以下の7種類です。

  • 葛根(かっこん)
  • 麻黄(まおう)
  • 大棗(たいそう)
  • 桂皮(けいひ)
  • 芍薬(しゃくやく)
  • 甘草(かんぞう)
  • 生姜(しょうきょう)

これらの生薬がバランスよく組み合わされることで、葛根湯という一つの処方が成り立っています。

🧭 葛根湯が用いられる場面の目安

漢方医学では、同じ「風邪」という症状でも、その人の体質や症状のあらわれ方によって、適した処方が異なると考えられています。葛根湯は、次のような状態のときに用いられることが多いとされています。

  • ぞくぞくとした寒気がある
  • 汗がまだ出ていない
  • 首や肩のこわばりを感じる
  • 比較的体力がある
  • 風邪のごく初期である

ポイントは「寒気があり、汗が出ていない状態」です。漢方医学では、こうした状態を「表寒(ひょうかん)」「実証(じっしょう)」と呼びます。一方で、すでに汗をかいているときや、体力が落ちているとき、症状が進行して喉の痛みや黄色い痰などが出ているときには、葛根湯ではなく別の処方が適していることがあります。

⏰ 服用のタイミング

漢方薬は一般的に、症状や体質に合わせて選んで服用するものです。葛根湯についても、ご自身の症状が用いられる場面に当てはまるかを確認したうえで、添付文書に記載された用法・用量を守って服用することが大切です。判断に迷う場合や、症状が強い場合には、医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください。

💊 一般用医薬品と医療用医薬品について

葛根湯は、薬局・ドラッグストアで購入できる一般用漢方製剤(OTC)として広く流通しているほか、医療機関では医療用医薬品としても処方されています。

一般用医薬品は、軽度の症状に対してご自身の判断で使用できるよう設計されています。一方、症状が強い場合や、持病をお持ちの方、複数のお薬を服用中の方は、医師の診察を受けたうえで医療用医薬品を処方してもらうほうが安心です。購入時に不安な点があれば、薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。

⚠️ ご使用の際の注意点

葛根湯を使用する際には、以下の点にご注意ください。

  • すでに汗をかいているとき、体力が著しく落ちているときには適さない場合があります
  • 高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能障害などの持病をお持ちの方は、ご使用前に必ず医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください
  • 妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性がある方は、医師にご相談のうえご使用ください
  • 高齢の方、虚弱体質の方も、事前にご相談いただくと安心です
  • 現在ほかのお薬を服用中の方は、相互作用の確認のため、必ず医師・薬剤師にお伝えください
  • 服用後に発疹、かゆみ、動悸、息苦しさ、胃の不快感などの症状があらわれた場合は、ただちに服用を中止し、医療機関を受診してください
  • 5〜6回服用しても症状の改善がみられない場合は、漫然と服用を続けず、医師・薬剤師にご相談ください
  • 添付文書をよく読み、用法・用量を守ってお使いください

🍵 漢方薬と上手につきあうために

漢方薬は、西洋薬とは異なる考え方にもとづいて選ばれるお薬です。漢方医学では「証(しょう)」と呼ばれる、その人の体質・体力・症状のあらわれ方などを総合的に見立てて、適した処方を選びます。

つまり、同じ「風邪のひき始め」という症状でも、寒気が強い方、汗をかきやすい方、喉が痛む方、胃腸が弱い方など、それぞれに合った処方が異なるということです。葛根湯は数ある風邪の初期に用いられる漢方薬のひとつであって、すべての方に適しているわけではありません。

また、漢方薬を服用する際は、十分な休養・睡眠・水分補給などの基本的な体調管理を併せて行うことも大切です。お薬だけに頼らず、生活習慣全体を整えることで、体本来の調子を取り戻しやすくなります。

👩‍⚕️ おわりに

葛根湯は、長い歴史の中で多くの人に親しまれてきた、日本でもっとも身近な漢方薬のひとつです。風邪のひき始めという、まさに体調を崩しかけているタイミングで選択肢に挙がる処方として、覚えておくと心強い存在かもしれません。

ただし、漢方薬は「誰にでも合う万能薬」ではありません。ご自身の体質や症状に合っているかを確認するためにも、購入時には薬剤師・登録販売者に相談することをおすすめします。気になる症状が長引く場合や、持病をお持ちの方は、必ず医療機関を受診してください。

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