【第5回】花粉症の季節や風邪のひき始めに「小青竜湯」

「症状で選ぶ漢方薬ナビ」シリーズ第5回は、花粉の季節や風邪のひき始めに気になる「水のような鼻水」「くしゃみ」のお悩みに古くから用いられてきた漢方薬、**小青竜湯(しょうせいりゅうとう)**をご紹介します。

春先のスギ花粉、秋のブタクサ、季節の変わり目の寒暖差――現代の私たちの暮らしには、鼻のトラブルを引き起こす要因がたくさんあります。「鼻水が止まらない」「くしゃみが続く」といった症状は、日常生活の集中力や快適さに大きく影響するもの。今回は、こうした鼻の不調に対して漢方の世界で古くから用いられてきた小青竜湯について、その特徴や用いられる場面、注意点などを詳しくご紹介します。

🤧 こんなお悩み、ありませんか?

  • 水のようにうすい鼻水が止まらない
  • くしゃみを何度も繰り返してしまう
  • 鼻づまりではなく、鼻水が「タラタラ」と出てくる
  • うすい痰を伴う咳が出る
  • 体が冷えると症状が悪化しやすい
  • 花粉の季節になると鼻の症状が気になる

こうした症状は、アレルギー性鼻炎や花粉症、風邪のひき始めなど、さまざまな場面で経験されるものです。鼻の悩みに対しては、漢方の世界でも複数の処方が用いられてきましたが、その中でも「水のようにうすい鼻水」が特徴的な場合に用いられることが多いのが、小青竜湯です。

🐉 小青竜湯ってどのような漢方薬?

小青竜湯は、約1800年前の中国・後漢時代の医学書『傷寒論(しょうかんろん)』および『金匱要略(きんきようりゃく)』に収載されている、非常に歴史の長い処方です。同じ古典に収載されている葛根湯と並んで、風邪や呼吸器の症状に用いられる代表的な漢方薬として、長く伝わってきました。

「青竜(せいりゅう)」とは、中国の伝説に登場する東方を守る神獣の名前です。漢方処方の中には「青竜湯」「白虎湯」「玄武湯」「朱雀湯」など、四神(しじん)の名を冠したものがあり、それぞれに意味が込められています。「小青竜湯」という名前は、こうした伝統的な命名にもとづくもので、処方の歴史の長さを物語っています。

日本でも江戸時代から広く用いられており、現代でも医療用・一般用ともに、特に鼻炎や花粉症の症状に対して利用されている代表的な漢方薬のひとつです。

効能効果としては、体力中等度またはやや虚弱で、うすい水様のたんを伴う咳や鼻水が出る方の、気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症などに用いられる漢方薬として知られています(※効能効果は製品の添付文書をご確認ください)。

配合されている生薬は、以下の8種類です。

  • 麻黄(まおう)
  • 芍薬(しゃくやく)
  • 乾姜(かんきょう)
  • 甘草(かんぞう)
  • 桂皮(けいひ)
  • 細辛(さいしん)
  • 五味子(ごみし)
  • 半夏(はんげ)

これら8種類の生薬がバランスよく組み合わされ、小青竜湯という一つの処方を構成しています。

🔍 小青竜湯が用いられる方の目安

漢方医学では、同じ「鼻水」「くしゃみ」という症状でも、その性質や体質の状態によって、適した処方が異なると考えられています。小青竜湯は、次のような状態の方に用いられることが多いとされています。

  • 体力は中等度またはやや虚弱である
  • 水のようにうすい鼻水が出る
  • くしゃみを繰り返す
  • うすい痰を伴う咳が出る
  • 体が冷えやすく、冷えると症状が悪化しやすい
  • 鼻づまりよりも鼻水のほうが目立つ

漢方医学では、こうした状態を「水滞(すいたい)」や「寒証(かんしょう)」などの考え方で説明します。体の中に余分な水分が滞り、かつ冷えが背景にある状態に対して用いられる処方とされています。

一方で、鼻水が黄色く粘り気のある場合、喉の強い痛みを伴う場合、熱感が強い場合などには、小青竜湯ではなく別の処方が適していることがあります。鼻炎や花粉症の症状はタイプによって用いられる漢方薬が異なるため、ご自身の症状の性質を見極めることが大切です。

🌸 鼻炎・花粉症に用いられる漢方薬のタイプ

鼻炎や花粉症の症状に用いられる漢方薬には、小青竜湯以外にも複数の処方があります。たとえば、鼻づまりが強く、鼻の奥に熱感がある場合には別の処方が選ばれることがありますし、症状の出方や体質によっても適した処方が変わってきます。

漢方薬の選択は、症状のあらわれ方(鼻水の性質、鼻づまりの有無、熱感の有無など)と、その人の体質(体力、冷えの有無、胃腸の状態など)の両方を考慮して行われます。ご自身に合った処方を選ぶためには、薬剤師・登録販売者・医師に相談することをおすすめします。

⏰ 服用について

漢方薬は、一般的に体質や症状に合わせて選んで服用するものです。小青竜湯についても、ご自身の症状が用いられる場面に当てはまるかを確認したうえで、添付文書に記載された用法・用量を守って服用することが大切です。判断に迷う場合や、症状が強い場合には、医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください。

💊 一般用医薬品と医療用医薬品について

小青竜湯は、薬局・ドラッグストアで購入できる一般用漢方製剤(OTC)として広く流通しているほか、医療機関では医療用医薬品としても処方されています。

一般用医薬品は、軽度の症状に対してご自身の判断で使用できるよう設計されています。一方、症状が強い場合や、持病をお持ちの方、複数のお薬を服用中の方は、医師の診察を受けたうえで医療用医薬品を処方してもらうほうが安心です。耳鼻咽喉科、アレルギー科、内科、漢方を専門とする医療機関などでは、より個別の状態に合わせた処方が可能です。

なお、花粉症やアレルギー性鼻炎に対しては、漢方薬以外にもさまざまな治療法があります。症状が強い場合や、複数年にわたって症状が続いている場合は、医療機関で総合的にご相談いただくことをおすすめします。

⚠️ ご使用の際の注意点

小青竜湯を使用する際には、以下の点にご注意ください。

  • 胃腸が弱い方、食欲不振・吐き気・嘔吐のある方は、ご使用前に医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください
  • 麻黄(まおう)を含む製剤のため、高齢の方、心臓病・高血圧・甲状腺機能障害・腎臓病・糖尿病のある方は、ご使用前に必ず医師・薬剤師にご相談ください
  • 動悸、不眠、発汗過多、全身脱力感、手足のふるえ、排尿障害などの症状があらわれた場合は、ただちに服用を中止し、医師・薬剤師にご相談ください
  • 妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性がある方は、医師にご相談のうえご使用ください
  • 現在ほかのお薬を服用中の方は、相互作用の確認のため、必ず医師・薬剤師にお伝えください
  • ほかの麻黄を含む漢方薬や、エフェドリン類を含むお薬との併用には特に注意が必要です
  • しばらく服用しても症状の改善がみられない場合は、漫然と服用を続けず、医師・薬剤師にご相談ください
  • 添付文書をよく読み、用法・用量を守ってお使いください

💡 麻黄を含む漢方薬について

小青竜湯は、麻黄を含む代表的な漢方薬のひとつです。麻黄はエフェドリンという成分を含む生薬で、漢方処方において重要な役割を果たしますが、体質や持病によっては慎重な使用が求められます。

特に、複数の麻黄を含む漢方薬(葛根湯、麻黄湯、小青竜湯など)を同時に服用すると、麻黄の摂取量が過剰になる可能性があります。複数の漢方薬を使用する際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。また、市販の総合感冒薬や鼻炎薬の中にもエフェドリン類を含むものがあるため、併用には注意が必要です。

🩺 鼻炎・アレルギー症状が続くときに考えたいこと

鼻炎や花粉症の症状は、一時的なものから長期にわたるものまで、さまざまなあらわれ方をします。漢方薬は選択肢のひとつではありますが、次のような場合には、医療機関の受診を検討することをおすすめします。

  • 症状が数週間以上にわたって続いている
  • 鼻水・鼻づまりに加えて、強い頭痛や顔面の痛みがある
  • 鼻水が黄色や緑色に変化し、強いにおいを伴う
  • 発熱を伴っている
  • 喘息のような呼吸困難を伴う
  • 毎年同じ時期に強い症状が出る

耳鼻咽喉科やアレルギー科では、原因の特定や、症状に応じた治療法の選択が可能です。アレルギー性鼻炎や花粉症の場合は、原因物質(アレルゲン)の特定や、生活環境の見直しも大切です。

🍵 漢方薬と上手につきあうために

漢方薬は、西洋薬とは異なる考え方にもとづいて選ばれるお薬です。漢方医学では「証(しょう)」と呼ばれる、その人の体質・体力・症状のあらわれ方などを総合的に見立てて、適した処方を選びます。

つまり、同じ「鼻水」「くしゃみ」という症状でも、鼻水の性質、体力の有無、冷えの有無、体質の状態などによって、それぞれに合った処方が異なるということです。小青竜湯は、数ある「鼻の症状に用いられる漢方薬」のひとつであって、すべての方に適しているわけではありません。

また、漢方薬を服用する際は、生活習慣の見直しを併せて行うことも大切です。特に花粉の時期や季節の変わり目には、規則正しい生活、十分な睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動、室内環境の整備(換気、掃除、加湿など)といった日々の暮らしの工夫が、体調管理の土台になります。お薬だけに頼らず、生活全体を見直していく姿勢が大切です。

👩‍⚕️ おわりに

小青竜湯は、1800年以上の長い歴史の中で多くの人に親しまれてきた、鼻の症状や呼吸器の不調に向けて用いられる代表的な漢方薬のひとつです。「青竜」という勇壮な名前が示すように、長い歴史の中で受け継がれてきた伝統的な処方として、現代でも医療現場・薬局の両方で広く活用されています。

ただし、漢方薬は「誰にでも合う万能薬」ではありません。特に小青竜湯は麻黄を含む処方で、持病や体質によっては慎重な使用が求められます。ご自身の体質や症状に合っているかを確認するためにも、購入時には薬剤師・登録販売者に相談することをおすすめします。症状が長く続く場合や、ほかの症状を伴う場合には、必ず医療機関を受診してください。

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